2012/02/02

チャトランと私(3)

チャトランは怪我の多い猫でした。何かの罠にかかったのか、尻尾を半分にちょんぎってきたことがありました。皮1枚でプラプラつながっている尻尾を見つけた母親が驚いて私を呼び、つかまえようと外にでると尻尾がポトリ、とベランダに落ちて「きゃーっ!」と大声をあげたものです。落ちた尻尾は「ご遺体」として母と庭の片隅に埋めました。猫は我慢強い動物です。どんなに痛かっただろうと思うのですが、チャトランは黙ったまま、じっとしているのでした。

片目のチャトランの、大きな目がケンカが原因なのか、まぶたを腫らして帰ってきたことがありました。目は治ることがなく、だんだんと細い目になっていきました。猫の爪には毒があるといいます。世界が見づらいだろう、と可哀そうに思いましたが、もしかしたら、彼は世界を見たくなかったのかもしれません。それでも、何かの気配を感じるとじっと耳をそばだてて、ギリギリまでじっと目をこらして、信じられない俊敏さで動くのでした。

ベッドを独り占め

2月のある日、私は新しい家に引っ越すことにしました。チャトランはその数日前から、私に愛想をつかしたかのように他人行儀にふるまっていました。「前はあんなに甘えてくれたのになあ。」と少しさみしく感じつつも、自分の気のせいかなあ、とも思ってみたり。けれど、チャトランはその日の朝でていったきり、戻ってきませんでした。

引っ越したのは古い家だったので、あちこち修理が必要でした。ペンキを塗ったり、磨いたり、部品を替えたり、毎日毎日掃除をしました。忙しさにかまけて、チャトランのことは少しの間忘れていました。

ふと、「チャトラン、どうしてるかなあ。家には入れてもらえないだろうからなあ。」と心配になることがありました。寒いだろうなあ、チピと仲良くしてるかなあ、と気になっても「まあ、しょうがないか。」とあきらめていました。

今にして思うと、チャトランは私の自立を助けてくれました。あそこで甘えられたら、きっと、引っ越す時期を逃したかもしれません。つんけんした態度だったから、チャトランのことをあまり心配せずにすんだのでしょう。


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本日のメッセージ

【自己紹介】 中村久美恵 BBSH2011年卒業BHSプラクティショナー💖動物が大好きなエネルギーヒーラーです💛犬2匹猫30匹をお看取りした経験から、ペットロスのヒーリングサポートをしています。こんにちは、中村久美恵です^^ 今日もあなたが目覚めるメッセージ♡お届けします。 ...