2012/07/25

犬の番外編


老人と犬

あるとき、リードなしで歩く老人と犬を見ました。老人はとても痩せていて、片足が悪いのか、少しびっこ気味にゆっくり、ゆっくり歩いていました。そして、その老人と前後しながら、大きな黒い老犬がゆっくりゆっくりと歩いていました。犬の背は地面から人間の腰ちかくまであったでしょうか。


愛犬と散歩中にこの2人(?)と再会したときは、緊張しました。リードなしの大型犬というのは、他人を不安にさせます。愛犬も相手が大きいので、ちょっと心配そうに様子をうかがっていました。ところが、その大型犬は「自分は無害ですよ。」と愛犬に伝えて、そそくさと飼い主の老人の後を追いかけました。きっと、自分より若いオス犬と、関わり合いたくなかったのでしょう。


老人に話しかけたことがありました。
「あら、ひもなしで大丈夫ですか?」
「ああ、これはなーんもせんけんね。」
老人はそういうと、道端のにおいをかいでいる老犬を少し待ってから、一緒に歩いていきました。

そうなのか、と関心しつつも、やはり一抹の恐怖心を抱えたまま、私は愛犬と散歩を続けました。近くの原っぱで、よく会う品の良い年配の女性と会いました。さきほどの老人と老犬の話をすると、

「とんでもない!あの犬は私の髪を噛んだのよ!」


どういうことかと尋ねると、足の悪いその女性は、大きな犬がリードなしでやってくるのを遠くに見かけ、あわてて庭先から玄関に向かいました。もともと、犬は苦手だったからです。老人が通り過ぎるときに、「だいじょうぶですよ、この犬はなーんもせんけん。」と、私に言ったのと同じセリフを女性に言ったのですが、犬は背中を向けた女性に追いつき、立ち上がった姿勢で髪の毛を噛んだのだそうです。


わたしは、彼女の話を聞いて、驚きました。小柄な年配の女性なら、あの犬が立ち上がれば頭部までゆうに届く。なぜそんなことになったのだろう?犬は何と言いたかったのだろう。


飼い主が自分の犬に寄せる信頼って、何だろう?とちょっと考えさせられた一件でした。





老人と犬(2)

あるとき、リードを斜め掛けしている老人を見かけました。へえ、田舎で(そんなしゃれたリードを使っている人がいるなんて)めずらしいな、と思い、犬に目をやると、なんと、土佐犬でした!

大きな土佐犬を散歩させている老人は、肩からショルダーのようにひもをかけ、さらに犬の首輪にもリードをかけて2重にしていました。これは、知らない人が見ても、気を遣っているのがわかるなあ、と遠目に感心していました。

ただ、その土佐犬は大きかったものの、歩き方から、やや年老いていることがわかりました。老人は強い口調で「ほら!」とか「こら!」とかいいながら、犬に引っ張られないようにしていました。老人は小柄でした。

実はわたしは、それまで本物の土佐犬を見たことがありませんでした。公園近くで初めて見かけたときに、あまりの大きさに驚いて、思わず「なんていう種類の犬ですか?」と老人に質問しました。犬の特徴ある顔が、ちょうど見えなかったからです。


老人は少し怒ったように「これか?土佐犬じゃろ!」と言いました。おまえ、土佐犬もわからんのか!と言いたげでした。

わたしはその声に、老人の悲しみも感じました。きっと昔は大きくて元気で勢いがあった犬だったのでしょう。けれど、どんなに強かった犬も、年とともにやせてきたり、足取りが弱くなったりします。老人は愛する犬が強かったときの、自慢の土佐犬に見られなかったことがはがゆかったのでしょう。

人間よりも早く年を取る犬たち。白内障になったり、耳が聞こえなくなったり、痴呆症が始まったりします。昔のような美しい毛艶がなくなり、やせてきます。

そんな風に変わってしまっても、最期まで大事に家族の一員として飼われてほしい、と切に望みます。



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【自己紹介】 中村久美恵 BBSH2011年卒業BHSプラクティショナー💖動物が大好きなエネルギーヒーラーです💛犬2匹猫30匹をお看取りした経験から、ペットロスのヒーリングサポートをしています。こんにちは、中村久美恵です^^ 今日もあなたが目覚めるメッセージ♡お届けします。 ...